令和8年4月1日法改正。高年齢労働者の労災防止の推進とは?

滋賀県東近江市で社会保険労務士をしております小辰知己です

近年、深刻な人手不足を背景に活躍するシニア層が増えています。

一方で、懸念されるのが「高年齢労働者の労災事故」の増加です。

本記事では、令和8年4月からの法改正について、企業が取り組むべき対策について解説します。

① 法改正の経緯

令和元年に「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有職者会議」が開催され、報告書では高年齢労働者の労働災害が増加傾向にあることや、加齢に伴う身体機能の低下への対応の必要性が指摘されました。

この報告書を踏まえ厚生労働省は令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康保持のためのガイドライン(通称:エイジフレンドリーガイドライン)」を策定しました。

かつてに比べ、現在のシニア層は身体的に非常に若々しくなっています。

しかし、加齢に伴う「視力・聴力の低下」「平衡感覚の変化」「筋力の衰え」は避けられない現実です。

これまでの労働安全衛生法は、主に「機械の安全性」や「化学物質の管理」に重点を置いてきました。

しかし、現代の労災の多くは「転倒」や「腰痛」といった、個人の身体機能と作業環境のミスマッチから生じています。

こうした背景から、「働く人の側に立った安全管理」へのシフトが求められるようになりました。

② 高年齢労働者の現状

厚生労働省によれば雇用者全体に占める60歳以上の高年齢者の割合は19.1%に達しており、約5人に1人が60歳以上という割合です。

一方で厚生労働省の統計によると、労働災害における高年齢労働者の割合は年々増加傾向にあります。

労働災害による死傷者数に占める60歳以上の割合は30%となっております。

  • 被災率の高さ: 60歳以上の労働者は、20代の労働者と比較して、転倒などによる休業4日以上の死傷事故の発生率が約3倍に上るケースもあります。
  • 事故の内容: 重篤な機械事故よりも、「段差のない場所での転倒」や「階段からの踏み外し」など、日常生活に近い動作での事故が目立つのが特徴です。

特に転倒災害が非常に多いと言われております。

③ 労働安全衛生法の改正内容

法改正では、以下の点が努力義務として規定されました。

  • 高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理などの必要な措置を講ずること

④ 今後策定される指針の見込み内容

エイジフレンドリーガイドラインを踏襲しつつ、以下の内容が盛り込まれる見込みです。

安全管理体制の確立として経営トップによる方針表明と体制整備

経営トップ自らが高年齢労働者の労働災害防止に取り組む姿勢を示し、安全衛生方針を表明することが重要です。

危険源の特定等のリスクアセスメントの実施

労働災害発生のリスクについて、災害事例やヒヤリハット事例から危険源を洗い出しリスクの高さを考慮して対策の優先順位を検討します。

身体機能の低下を補う設備・装置の導入

身体機能の低下を補う設備・装置の導入が求められます。

証明の確保、手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材の採用など転倒防止のための環境整備が重視されます。

また暑熱環境への対応も求められています。

高年齢労働者の体力の状況の把握

指針案では労働者の気付きとを促すため、加齢による心身の衰えのチェック項目を行うことが望ましいとされ、また若年期も含めて実施することが望ましいとされます。

⑤ エイジアクション100とは?

高年齢労働者の安全と健康を守るための具体的なチェックリストが「エイジアクション100」です。

中小企業において上記の指針全てに取り組むことは人的にも金銭的にも難しいとされます。

そのためポイントを絞って対策を進めることも重要と言えます。

以下にエイジアクション100について具体的に書かれたページをご紹介いたします。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00001.html

厚生労働省[エイジアクション100~ 生涯現役社会の実現につながる高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善に向けて ~」より運用

おわりに

今回は高年齢労働者の労災防止の推進について解説しました。

社会保険労務士として今回の法改正への対応を進めております。

特に高年齢労働者の割合の多い事業所では早めに対策を講じたいところです。

ご相談などあればお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。