運送業の未払い賃金の問題点

滋賀県東近江市で社会保険労務士をしております小辰知己です。

様々な業界で問題になっている未払い賃金問題。

特に狙われやすいのが運送業です。

こちらの記事では未払い賃金の現状や運送業がなぜ狙われやすいのか?を解説していきます。

そもそも未払い賃金とは

ではそもそも未払い賃金とはなにか?を解説します。

時間外労働をした場合は割増賃金を支払わなければなりません。

割増賃金を本来であれば支払わなければならないのに、支払っていないことを未払い賃金(以下未払い残業代)と言います。

また未払い残業代を請求する権利の消滅時効は、原則として3年です(令和2年4月1日以降に発生したもの)

つまり未払い残業代が発生している場合は3年前まで遡っての請求が可能と言えます。

現在は3年ですが、近い将来5年になると言われております。

時効が5年になれば請求可能な金額は約1.67倍に増えます。

裁判になれば未払い額だけでなく同額の付加金が付く可能性や遅延損害金が付く可能性もあり、事業主からすれば見逃せない問題です。

また2023年4月より、60時間超の残業代割増率が25%から50%へと倍増しました。

時効が今後5年になること60時間超の時間外労働の際の割増率の上昇。

これらの影響があり、未払い残業代のリスクが高まってきております。

運送業の未払い残業問題が狙われやすい理由

未払い残業代のリスクに関しては理解いただけたかと思います。

ではこの未払い残業代問題が特に狙われやすい(訴訟などに発展しやすい)業種の1つが運送業です。

狙われやすい理由としては以下が挙げられます。

①長時間労働が常態化

②労働時間管理の難しさ

では1つずつ見ていきます。

長時間労働が常態化

そもそも運送業は2024年問題の対象業種です。他は建設業、医療です。

対象業種となっているということは長時間労働の実態はありがちと言えます。

長時間労働=高額の未払い残業代のリスク。これが労働者や弁護士にとっては狙いやすい部分(訴訟などで)です。

実際に正式なデータではありませんが、全業種の未払い残業代請求の50%以上が運送業への請求とも言われております。

労働時間管理の難しさ

続いては労働時間管理の難しさも1つの要因と言えます。

運送業のドライバーの時間管理はデジタコに頼らざるを得ない状況です。これ自体は仕方がないのですが、そうなってくると運転時間以外の労働時間管理があいまいになりがちです。

そのために正確な労働時間を把握できておらず、会社としてもそもそも何時間の残業が発生しているのか?の把握ができておりません。

また未払い残業が発生しているかを把握されていない会社も多い印象です。

会社としては「残業代も含めた歩合給制度」や「ドライバーと残業代は払わない分、給与を多く払っているという点で合意している」と言った主張をされる会社も多いですが、これでは残業代を払っているとは言えません。

こういったことからも運送業の未払い残業代が問題化しやすい一因と言えます。

未払い残業代への対策

未払い残業代が発生しないようにしたい。でも現実的に労働時間を減らせば、売上も落ちるしすぐにはできない・・・

その様に思われた方も多いかと思いますし、実際にその様な声も多く頂きます。

未払い残業代リスクを下げる一番の方法は賃金形態の見直しです。

具体的に言えば歩合給制度の導入を検討いただきたく思います。

これらを導入することで訴えられない賃金制度を作っていくことが重要と言えます。

歩合給制度を導入することでなぜ未払い残業代への対策となるのか?

では歩合給制度の導入がなぜ、未払い残業代への対策となるのか?を確認していきましょう。

実際の具体例を出していきます。

【前提条件】月額35万円、月60時間の残業、月の平均の所定労働時間170時間の場合

固定給ケースの計算式

350,000円(固定給)÷170時間(月平均所定労働時間)×1.25×60時間=154,412円

上記の例ですと1ケ月辺り154,412円の残業代が発生します。

仮に全額未払いであれば年間で約180万円の未払い残業代が発生するということになります。5年に換算すれば約900万円です。

こうやって積み上げてみると大きな金額になることが理解してもらいやすいかと思います。

続いて歩合給を導入した場合の計算例を見ていきます。

歩合給のケースの計算式

350,000円(歩合給)÷230時間(総労働時間170時間+60時間※その月の労働時間)×0.25×60時間=22,827円

こちらの例では同じ労働時間ですが、1ケ月辺りの未払い残業代額は22,827円、年間約27万円ほどです。

固定給の場合は年間約180万円だったので約6分の1の金額です。

固定給の場合は月平均の所定労働時間で割りますが、歩合給の場合は月平均の所定労働時間で割ります。

また割増率も固定給の場合は1.25ですが歩合給の場合は0.25です。これがとても大きいですね。

同じ労働時間であっても給与形態の違いによって、支払う割増賃金の額が大きく異なります。

これが未払い残業代リスクを下げるために歩合給制度導入を検討する1つの理由です。

長時間の残業を余儀なくされる場合であれば有効な手段と言えます。

おわりに

今回は運送業の未払い残業代について解説しました。

未払い残業代のリスクから歩合給制度の導入にも触れましたが、単に歩合給制度を導入すれば何の問題もないというわけではありません。

導入に当たっていくつもの注意点があり、それらを解消していくことで正しく運用することができます。

弊所では運送業のサポート、未払い残業代リスク削減のお手伝いをしております。

お気軽にご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。