滋賀県東近江市で社会保険労務士をしております。小辰知己です。
こちらのページでは運送業の賃金規程作成時の注意点をご紹介いたします。
基本的にはどの業種においても賃金規程の構成は同じです。
ただし、会社の賃金形態や業種などで書き方に違いが出てきます。
一般の労働者とドライバーの給与形態の違い
多くの運送業の会社では一般の労働者(事務員や運行管理者)とドライバーの給与形態は異なるケースが多いです。
一般の労働者の給与は固定給+各種手当でドライバーは基本給+固定残業代または完全歩合給というケースです。
これらが混同してしまっている賃金規程をよく見かけます。
賃金規程の適用範囲の確認と一般の労働者とドライバーで明確に分けるようにしましょう。
1つの賃金規程ではなく一般従業員とドライバーで別に作成することもお勧めです。
固定残業代
運送業の多くの会社は労働時間が長時間になりがちです。
そのため固定残業代を導入している会社が多くあります。
それ自体は問題はないのですが、固定残業代が有効と認められる要件を満たしていない会社がとても多くあります。
これは運送業とか関係なくすべての業種で言えることです。
以下が最高裁判所の判例にて示された固定残業代が有効と認められるための要件です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 明確区分制 | 通常の賃金(基本給)と固定残業代(割増賃金)部分が、雇用契約書・給与明細上・就業規則で明確に区別されているか? |
| ② 時間数の明示 | 固定残業代が「何時間分の時間外・深夜・休日労働」に相当するかが明示されているか? |
| ③ 超過分の支払い | 固定残業代の対応時間数を超えて残業が生じた場合、超過分について別途割増賃金を支払っているか? |
①であれば基本給が30万円でその中に固定残業代(例えば30時間分が含まれている)といった形です。雇用契約書や給与明細にも明示されておらず、会社側としては「基本給に含んでいる」と主張しても従業員は「知らない」というケースが多くあります。
②は固定残業代が時間外労働何時間なのか?その中には時間外労働だけでなく、深夜労働や休日労働も含むか?これらをきちんと明示する必要があります。この点も雇用契約書や就業規則にてきちんと明示しておきたいです。
③は例えば固定残業代を45時間分支給しているとして、45時間を超えた時間外労働を行ったときにきちんと超過分を支払っているかという点です。45時間を5時間越えて時間外労働をした場合は固定残業代とは別に5時間分の残業代を支給する必要があります。
これらの他にも「家族手当に残業代を含んでいる」とか「雇用契約書に書いていないが従業員は理解している」と言ったように社内のルールの様な感覚で固定残業代を導入している会社が多いですが、大変危険です。
まずはきちんと制度を理解すること、条件(何時間分の固定残業代とするか?深夜労働や休日労働は含むか?)をきちんと明確にすること、そして雇用契約書と賃金規程にも固定残業代制度を導入していることをきちんと明示する必要があります。
これらを満たしていない場合は固定残業代制度が否定され、未払い賃金とされてしまうケースもあります。
歩合給制度
続いては歩合給制度です。
給与形態に歩合給制度を採用しているのであれば、賃金規程への明記が必要となります。
運送業の歩合給においては売上×支給率のように計算されている(※一例です)かと思いますが、このように計算方法はきちんと明記しておきたいです。
また、保証給についても明記しておきたいです。
労働基準法第27条では以下のように定められています。
出来高払い制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
保証給とは実際の歩合給が一定額を下回った場合に、最低限の賃金を保障する制度です。
こちらの記事では保証給に関しては詳しく書きませんが、保証給の規定も忘れず入れておきましょう。
運行ルートごとに賃金の計算が異なる場合
運送業の賃金形態の特徴として運行ルートごとに給与の計算方法が異なる場合があります。
ルートによって走る距離などが異なるためです。
そしてルートごとに固定残業設定の時間数や歩合給の計算方法が異なります。
これらの計算方法は全て賃金規程に明記する必要があります。
少し手間がかかりますが、運行ルートの分類を行いルートごとの賃金の計算方法を明記しましょう。
おわりに
今回は運送業の賃金規程作成時の注意点を書きました。
特に歩合給や固定残業の箇所はトラブルになりやすい箇所です。
きちんと必要事項を明記しトラブル防止につなげていきましょう。
当法人では運送業のサポートを積極的に行っています。
お気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
